●2005/09/08浜武レポート「9・11決戦〜日本の選択」

「皆さんの大切な預貯金を国内でなく海外で運用されるとしたら」と言う問いに「危険だ」とか「けしからん。それは国民が賢明に貯めたお金が国外に流出するという事に他ならない」と答える方が大半のようである。

多少、金融に興味がある方はこうだ。「海外の権利を買い、配当を得る。直接、工場を作り、人を雇って『モノ造り』するより遥かに利潤を得られる方法である」と言い「日本の国益に適うもの」と続ける。

そう言われると「なるほど」と納得してしまいそうな理論である。

しかしながら、その理論を慎重に推し進めてみると多くの日本人が薄々感じつつも直視したくない社会像が現出する。

まず、国内に資金が流れなくなる。この事は日本から生産設備が減る事と同値である。

それだけでは済まない。日本は中山間地が大半で、それら地方の最大の雇用先は役場と公共事業の下請けである。 小中学校まではいいが高校まで十キロ近くをバイク通学したり、本当の田舎だと寮に入らないと高等教育を受けられない。予備校や塾も当然通 えない。

そして、高校卒業しても仕事がない(無論大学も)。 親は誰しも人並みに子供を育て上げたいからテレビの世界のような高校生活や大学に通 わせたい。でも、田舎には仕事がない。子供たちを高校にやるだけで精一杯(年々上がる固定資産税を納めるのも大変)。 この悪循環を断ち切るため産業の新興、工場誘致を計り、雇用を創出するのが首長の使命であった。

しかし、日本の生産設備に新規投資するより海外市場の方が配当は大きい。あなたが投資家であればわざわざ利息の少ない所に投資をしない選択と同じである。

親は子供のため都会に出稼ぎに行く。子供も仕事を求め知識を習得するため都会に行く。

そして程なく戻ってこない。

田舎と都会との生活格差が100倍近くあるとされるお隣りの中国では国営企業のリストラが荒ましい。

当局が把握するだけで2800万人の失業者が溢れている。日本の組合なんか比較にならない社会主義国家組織がリストラを容認、構造改革を断行している。

しかし、政権転覆にまで発展しない。無論国家権力が押さえ込んでいるのだろうけど、それ以上に政治指導者が全国民を食べさせて行くという強い信念が感じ取れる(そのために非人権的行為を行使してでも体制維持に努めている)。この根本がある限り国民は政権を支持するのは歴史の証左である。

さて、今度の総選挙。冷戦終結後のグローバル化の中で世界各国が改革を断行している。その中で日本が生き残って行く道程は決して平坦ではない。

しかしながら、政治指導者がムードとか仁侠とかでその場凌ぎをかますようでは世界で生かせてもらえない。足下を見透かされるだけである。 改革を提示するには全国民を食べさせて行く、地域を疲弊させない、国家の最小構成単位 である家庭を守る、等のための施策を提示しなければならない。その事に留意するのであれば迫力ある改革が可能になる。そして世界からも日本の政治は舐められないようになるのだ。

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