●2006/04/18浜武レポート「2007年問題・中〜女性の社会進出を可能にするために」

「07年問題」の本質【中】

「彼は仕事を辞めて家にいて欲しいと云う。だけど、まだ数年しか働いていないし」

彼女は小学校時代から塾に通い、学費の高い中高一貫校に見事合格。高校時代、海外にショートスティをし、英検も準一級を取得。さらに、難解な数学、理科の問題を解き、センター、二次試験の難関も突破。国立大法学部ではゼミで判例や六法の見方を修得。その後、女性には極めて狭き門である上場企業に総合職として入社。

そして、仕事もでき、人間的にも魅力ある男性との出合い。

結婚と職場、究極の選択。

今まで物心ついた時から努力して階段を一歩一歩積み重ねて手に入れた職場を辞める。

「今までは何だったんだ」

ここ最近行われた旧帝大大学院法学研究科のゼミ調査報告によると「将来結婚を約束している男性と同じ職場、職種で同期として働くことになったと仮定する。そして、結婚直前にあなたの方が男性より出世の可能性が高く、給料も高い場合、どちらかが仕事を辞めなければならないとするなら、どうしますか?」

と云う質問に、女子生徒が迷わず

「男性が辞めるべきだ」

なる回答が「少数ではなかった」との報告がなされた。 また「仕事と結婚の二択」について「仕事」を選んだ女子学生達に動機を尋ねると

「結婚はいつでも出来るが、就職は目の前の機会を逃したら、次の保証はない」と云い切るものもあったという。

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女性が労働市場に大きく進出するきっかけが「第一次世界大戦」だったと多くの識者は語る。

それまでの国家間の戦争は長期に亘ることなく、長期化したとしても収穫の時期に「暗黙の休戦」もあった。

戦争の長期化の背景は産業革命であるが、戦車、機関銃、毒ガスの登場により、中世的なかっこいい騎士(ナイト)の決闘的なそれから、国を上げた総力戦と変質した。

そして、本国の労働力不足を女性が補ったわけだ。

定時制を要求される交通機関の運転手を初め、男性でない無理と云われた多くの職種に女性が進出したのもこの時からだった。

07年問題。労働力不足が叫ばれ、その打開への回答が「女性労働力」「外国人労働力」と云われているのは疑いはない。

しかし、この不足を単なる「男性労働力」の代替えと捉えるようでは、「子を生まない『さばける』女性」のみを市場経済は優先的に選択してしまうだろう。

今、育児休暇等の国の手厚い「子育て」支援策は、その「さばける」女性を前提に整備されているわけで、組合が「社内に託児所を」と云っても、派遣社員等の非組合員にまで、子育て支援の恩恵が行き届いている節はない。寧ろ、整備が進めば進むほど、どこかで利潤を捻出する分、正社員の少数精鋭化が進み、辞めるリスクがある(あなたは子どもを生んでも仕事を続けますか?なんて面 接で聞いては人権問題になる!)女性社員は狙い撃ちされ、女性の社会進出を阻むだけである。

先掲の女子大学生は社会経験はないもののその事を十二分に熟知しているのである。

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国が今の繁栄を永続するには国民一人一人が輝かなければならない。

その輝くきっかけが社会であり会社という道具である。この道具をゼロから創るのは困難だから、先人の苦労の続きを引き継 いだ方が効率的である。

問題は「そこにどのように『人材』を供給していくか」となる。

ここで発想の転換を提示したい。

大学の新卒採用と言うのがある。ならば女性も子どもが十歳にまで育ったら「新卒採用」みたいな機会を創ればよい。

無論、仕事を継続する人もいていい。仕事をしない人もいていい。しかし、子育て後もう一度チャンスがあるなら、もう一度勉強し直す気持ちが起きる。子どもと一緒に勉強するのもいい。今の日本なら安価な放送大学等で高いレベルの教養や実務も多少学べる。何より、一人でも多くの女性に先人が創った道具を自在に操る戦力になって欲しいのだ。

幸い女性は育児、産休は大変だが多くの見つめ直す時間を持っている(男性だと定年かリストラされない限り手に出来ない)。その時間で今の社会をより重層的にして欲しいのであり、その新しい未来を投資対象とすべきである。

民間企業も自己投資する有能な人材を欲しているはずだ。間口の強制ができないなら、公務員の採用、学校の先生の採用あたりから導入してもよい。

安直な発想かもしれない。しかし、この「改革」は女性労働力の問題に留まらい労働力「革命」につながっていく。 【後編に続く】

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