●2006/08/08浜武レポート「狙われる理由〜グローバル化が招く社会像」
狙われる理由
「あなたは本気でバス事業をさせる気ですか。皆はああ云うけど、もし自分の会社なら絶対やりませんよ。」 人目をはばかりながら、あるサラリーマンは候補者を問い質した。
今、全国各地のミニ市が競って導入しようとしている「福祉バス」「コミュニティバス」と称する事業。車の免許を持つ機会に恵まれなかった60才以上の女性有権者等交通 弱者に強い支持を得、近隣市が導入すると必ず地方選の政策メニューに登場し、無党派保守系から共産党までがこの施策に支持表明をする。
しかしその実態は、路線の長さに比例し地方自治体の手だしが増える不採算事業。運賃収入をどんなに計上しても年間一億円近い赤字を出す代物。
さらに厄介なのは、いったんバス事業を始めると天変地異でも起きない限りこの事業は止める事が出来ない性格を有する事だ。
勿論、すべてがすべて赤字ではない。三重県四日市市のように、路線バス廃止後、町内会有志でバス会社を創立。病院やマーケットの前に名前を冠したバス停を設置し、スポンサー料を徴収。役員報酬も考えられないくらい押さえることで百円バスを快走させている所も実在する。
だが、ほとんどは民間では考えられない不採算事業であり、赤字分は地方自治体の一般 会計から繰り入れられる。
そして結局、市町村はバス事業のプロではないため、そこを撤退した、もしくは、そこに手を出さなかった民間バス会社に委託させ、正価で落札される。
要するに税金を使い、特定企業が高額なバスを代行運転する仕組みができている。 市役所の窓口、保育園、学童保育、図書館、そしてその箱モノの清掃等、ありとあらゆる場所で民間委託が進められている。
そして、その委託先は「市民の安全、安心のため」と掲げる事で「万が一」を忌み嫌う市正職員の裁量 で大手に独占され、競争原理は働かない。
その委託先の実態は円滑な経営指導を促すコンサルティング会社と称するもので、様々な入札実績を誇るが、その実績は、実務を引き受ける下請け会社、孫受け会社を統括する事で獲得した累積に過ぎず、市からの振り込み通 知書は見ても、現場を見に来る事は希で、現場で汗するのを見た者はいない。
一つの仕事に、市の職員、委託会社、請負業者、そして現場バイトもしくは派遣社員。まるでプールの不幸な出来事と全く同じ構造が日本に多数存在する。
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ルドルフ・W・ジュリアーニ前ニューヨーク市長は八月三日、中堅ソフト会社ソフトブレーンとの提携を発表した。九月にも全額出資の法人を設立し、二○○八年度にも始まる日本版企業改革法に伴う内部統制の支援事業に乗り出すと云う。
ジュリアーニ氏は「街のガラスが一つでも割れて放置されていたら、街の秩序は保たれない」との論法から、ニューヨーク市警の改革に乗りだし、目を瞳る治安秩序の回復を達成した剛腕の持ち主であるが、引退後は世界的なコンサルティング会社を設立し、日本に大きな興味を持つ事で知られていた。
小泉改革後、日本は残された大きな市場と世界から注目されている。日本には中国に比して債権債務を担保する法律の強制力が確立されているからだ。
グローバルスタンダードでは責任の擦り合いは全く通 用しない。名前や実績に縋る事で自己保身も出来ない。あの錚々たる中国公司でさえ、欧米列強は今も尚、情け容赦ない契約をかわさせている。実力本意の社会構造である。
仕組みさえ創れば、汗かかずして、役員報酬、と云う時代は最早過去。隙あらば、法律に従い、仕組みごと持っていかれるのだ。
見てみぬ振りでは(知らぬ間に塀の中)済まされない時代の到来である。